AIに「写させる」だけで正答率が17%から94%に
画像の問題を生成AIに解かせると正答率17%でした。AIには図の書き写しだけをさせ、規則の探索は端末側のコードに任せる構成に変えたところ94%になりました。実測値と、この分け方が効く条件を書きます。
カメラで写した問題をAIに解かせるアプリを作っています。 図形の規則性を問う問題(法則性・暗号・命令表)で、どうしても正答率が上がりませんでした。
原因を切り分けたところ、AIは規則を推理できていないのではなく、図を正しく読めていなかったことが分かりました。
そこで、AIに求める仕事を変えました。
変更前と変更後
| 変更前 | 変更後 | |
|---|---|---|
| AIの仕事 | 図を見て答えを出す | 図を構造として書き写す |
| 規則の探索 | AI | 端末側のコードが総当たり |
| 答えの決定 | AI | 規則が全ての例を説明できたときだけ確定 |
つまり、知覚はAI、推論はコードに分けました。
測った結果
| 経路 | 正答率 | 平均時間 |
|---|---|---|
| 写して端末で解く | 17/18(94%) | 46〜65秒 |
| AIに直接解かせる | 2/12(17%) | 147〜210秒 |
正答率が5.5倍、速度も3倍近く違いました。
注目すべきは17%という数字そのものです。この問題は5択なので、 当てずっぽうに選んでも期待値は20%です。 つまりAIに直接解かせる経路は、ランダムに選ぶより悪いという結果でした。
なぜ「写させる」と強いのか
規則性の問題は、実は2つの異なる作業に分かれています。
- 図を正確に読み取る(知覚)
- 読み取った内容から規則を見つける(推論)
このうち2は、候補が有限なら総当たりで確実に解けます。 コードで全パターンを試して、読み取った例をすべて説明できる規則が1つだけ残れば、それが答えです。
一方1は、コードには難しく、AIが得意です。
それぞれの得意な仕事だけをやらせると、両方をAIに任せるより強くなります。 AIが1を間違えると2も連鎖して壊れますが、分ければ1の失敗を検出できるようになるからです。
分けたことで「わからない」が言えるようになった
この構成の一番の効能は、正答率よりむしろこちらかもしれません。
端末側で規則を探索すると、次の3つの状態を区別できます。
- 読み取った例をすべて説明できる規則が1つだけ見つかった → 答えを出す
- 説明できる規則が存在しない(
no-rule)→ 読み取りに失敗している - 規則は残ったが選択肢を絞れない(
ambiguous)→ 判断材料が足りない
後ろ2つのとき、当てずっぽうを返さず「読み取れませんでした」と答えられます。
AIに直接解かせていると、この区別ができません。 自信がなくても何かしらの答えが返ってきて、外部からは正解と区別が付かないからです。
実装では、ここで「とりあえず一番ありそうな選択肢」を返さないことを設計上の約束にしています。 それをやると、せっかく分けた意味がなくなります。
読み取り結果を画面に出す
もう一つ入れたのが、AIが読み取った図を利用者に見せる仕組みです。
読み取りがずれたまま、たまたま辻褄の合う規則が見つかる可能性は消せません。 確率は低くても、起きたときに誰も気付けない設計は危険です。
そこで読み取った図を画面から開けるようにし、選んだ選択肢に印を付けました。 利用者が「AIはこう読んだのか」を確認できれば、誤読に気付けます。
ソルバの出力を画面から見えなくしない。 これは実装ルールとして明文化しています。
この分け方が効く条件
万能ではありません。次の条件がそろったときに効きます。
- 推論部分の候補が有限で、コードで列挙できる
- 知覚の失敗を検出できる(規則が見つからない、選択肢と一致しない、など)
- 検出したときに取れる行動がある(読み直す、諦める)
3つ目が意外に重要でした。詳しくは 「わからなければ諦めろ」と指示したら、全体の正答率が下がったに書きます。
適用範囲の限界も測っておく
正直に書いておくと、この構成で全部が解けるわけではありません。
「法則性」の問題は形式が発散していて、マス目・自由配置・入れ子と矢印・ 3Dのサイコロ写真まで出ます。実物8問のうち、構造化して端末側で解けたのは4問程度でした。
ここは上限があると理解したうえで手を入れています。 どこまでが守備範囲かを測っておくと、無駄な改善に時間を使わずに済みます。
まとめ
- 生成AIの精度が出ないとき、推論が悪いのか知覚が悪いのかを切り分ける
- 知覚が原因なら、AIには写させるだけにして、推論はコードに移す
- 分けると「わからない」が言えるようになる。これは正答率以上に価値がある
- AIの読み取り結果は利用者に見せる。 誤読に気付ける場所を残しておく
関連する記事
- AIの「思考量を減らす」最適化が精度も速度も悪化
書き写しに推論は要らないだろうと考えて思考量を下げたところ、正答率が落ちたうえに所要時間まで伸びました。差し戻すまでに分かったことと、代わりに効いた速度改善を書きます。
最終更新日: